永住申請と法令違反
法令違反の経歴があるとどうなるのか
永住申請を考えている人の中には過去に法令違反を犯したため申請をあきらめたり、躊躇(迷っている)している方が大勢いると思います。
実際当事務所でも永住申請する人の約10%~15%は何らか法令違反を犯している人がいます。それでは当所で過去に法令違反があった上で永住申請をした事例をいくつかご紹介します。
事例(1)万引き事件【刑法第235条の窃盗罪】
本件事例は依頼者が過去留学生時代に、深夜コンビニでバイトをしていた帰りに違うコンビニでどうしてもおなかが空いており我慢できずに、おにぎりやお菓子など数点を万引きしコンビニの店員に発見され警察に通報のうえ、警察書に任意同行され取り調べ調書・指紋採取などをされた事件。
そして、刑法犯罪の中で比較的多いのが本件事例です。
事例(2)痴漢事件【刑法第176条の強制わいせつ罪】
本件事例は依頼者が早朝会社に出社する際に、ラッシュとなりとある駅から乗車してきたOLの女性の後方の位置となったため、その女性にわいせつ行為(臀部(お尻)を約2駅間、時間にして5~6分に渡って手で接触した。)行い、その女性が電車内で被害を訴えたため次の駅で依頼者と被害女性は降車し、駅員からの通報により警察署に連行され、犯行を認め逮捕され拘留の上、起訴され罰金を支払った事案。
事例(3)詐欺罪【刑法第246条】
本件事例は依頼者がある家電販売店から大量のパソコンをクレジットカードで購入し、その全部のパソコンに細工をしたうえ不具合があるとして、クレジットカードをキャンセルした上、家電販売店とメーカーから損害金の請求と一部パソコンを詐取した事案。後日警視庁の外事課に逮捕され拘留の上、起訴された事案。
事例(4)不法入国【出入国管理法及び難民認定法第70条1項】
本件事例は1990年代に依頼者がある第三国で偽造パスポートを作成し第三国から日本に偽造パスポートで不法入国し、その後5年間不法滞在を犯しながら、日本各地の飲食店で働き、その後日本人女性と結婚し、入国管理局に出頭し在留特別許可を得て数年後日本人配偶者資格を得た事案
事例(5)不法入国【出入国管理法及び難民認定法第70条1項】
本事例は1980年代に東南アジアから日本に渡日し、興業VISAでパブで就労する事が入管で認められていた時代に、18歳でないと当該興業VISAの要件を満たさなかったため、本人は偽造書類と偽造旅券を作成し日本に不法入国し、当該興業VISAは期間が6箇月だったため不法入国を何度もくり返した上、その後不法滞在となり数年後に日本人と結婚し在留特別許可を得て日本人配偶者資格を取得した事案。
事例(6)不法入国【出入国管理法及び難民認定法第70条2項】
本件事例は1990年代に南アジアから先行して実父が渡日し、数年後その子がある国への渡航チケットを購入したが目的は日本を経由地として経由しトランジットを利用して日本に不法入国した事例。その後5年間不法滞在となり飲食店で就労し、その後日本人と結婚し在留特別許可を得て日本人配偶者となった事例。
事例(7)資格外活動違反【出入国管理法及び難民認定法第70条4項】
本件事例は2010年代欧州地域の留学生が、本国の両親からの学費がある事情によって途絶えたため自らの力で学費を捻出するために外人パブで就労しており警察に逮捕されその後入管から出国命令となり、出国したがその当時付き合っていた日本人と結婚し結婚VISAで再渡日を果たした。
事例(8)不法残留【出入国管理法及び難民認定法第70条5項】
商用の短期滞在で渡日し、イベント等の就労を行ない数ヶ月日本に在日したが、本国に帰国して将来を生きていくのが嫌になり、不法残留と知りながら帰国せず不法残留となりその後日本人と結婚して在留特別許可を得て日本人の配偶者となった。
事例(9)不法残留【出入国管理法及び難民認定法第70条5項】
日本人と隣国で結婚しその後結婚VISAで渡日したが日本の両親はじめ家族に受け入れてもらえず、ノイローゼとなり、日本人の夫に告知せず、ある地方から東京の友人を頼り、その後実質的には夫からの逃亡により6箇月経過した時点で不法残留となったが、渡日から1年経過後に在留期間満了となり不法残留となり、その後その状態が2年間続いた、しかしその後新たな夫と恵り合い、前夫と正式に離婚し、現夫との結婚により在留特別許可を経て日本人の配偶者となった。
事例(10)不法残留【出入国管理法及び難民認定法第70条5項】
隣国から留学生として専門学校に通学していたが、専門学校に通学するのが嫌になり専門学校を自主的に退学してしまったが、しかし専門学校の学費を支払ってくれた本国の両親に申し訳なく、本国に帰国する事もできず、自主退学から6箇月後に不法残留となった。
その後日本人と結婚し在留特別許可を得て日本人配偶者資格となったが離別し、定住者を経由して再び日本人と結婚し日本人配偶者となった。
あとがき
本件事例(1)〜(10)は、当所が約40年にわたって入管手続きを行ってきた中で許可交付に至った事例のほんの一部です。それでは、この事例を基に法令違反した場合に、その後どの位の時間が経過すれば、永住申請ができるのかを解説していきます。
先ず、不法残留(以下「オーバーステイ」という。)の経歴があると入国管理局永住審査部門の永住許可申請の審査が数10年前と比較してかなり厳しくなってしまいますが、しかし永住申請ができない訳ではありません。そして、一般的なご質問で不法滞在から10年間は永住申請ができないのか?とお問い合わせがありますが、それは日本国籍を取得する帰化申請の場合です。
オーバーステイとなってしまい、在留特別許可をもらった外国人が10年又は20年以上日本に在留していないと永住申請ができないという規定はなく、在留している期間については出入国在留管理庁が定めた「永住許可に関するガイドライン」のとおりです。
したがって、原則10年在留に関する特例も当てはまることになります。例えば、日本人と結婚し婚姻生活が3年以上継続し、かつ1年以上日本に在留していれば永住申請することができます。
ただし、この場合でもガイドラインにある「現に有している在留資格について,出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること」とあり、在留期間「3年」を「最長の在留期間をもって在留する」と取り扱うとありますので、婚姻生活が3年継続していることに加えて在留期間が3年与えられていることが必要です。
以上のようにオーバーステイ歴があっても永住許可申請は不可能ではありません。しかし、過去の在留状況の審査は当然厳しく行われますし、法令違反や不法入国の有無そしてオーバーステイの事例内容により審査の軽重が図られるので一律で「3年」が目安という事ではない事に注意をして下さい。
そして、過去の事例に対しては、自ら事件の具体的内容を事系列で疎明したり当該事件に至った経緯・状況・心情などを反省も踏えて纏める事が肝要です。そして、過去の事件についての対策も重要ですが、反射的に、永住申請する自分自身が将来的に日本で安定的に生活をできていけるかどうか、きちんと税金をおさめているか等が永住申請ではより重要となってきます。
しかし、法令違反や不法入国、オーバーステイがあると永住申請においては自分自身の過去の事件を整理し、且つうまく纏めるなどとても不安になられる方も多いと思います。そのような時には、長年の実績と経験豊富な当事務所にご連絡ご相談下さい。