「永住権」と「帰化」の違いを徹底解説
このコンテンツでは勘違いしやすい「永住権」「帰化」「特別永住者」「定住者」との違いを踏まえつつ、取得条件や申請方法などを詳しく解説します。
1:永住許可申請手順
永住権申請は以下の2パターンがあります。
申請は原則本人が行います。
(1) 現在持っている在留資格から永住者の在留資格へと変更したい場合
(2) 出生などによって永住者の在留資格を取得する場合
(1)現在の在留資格から永住者に在留変更する場合
変更の期限は、在留期間の満了する日以前です。永住許可申請中に在留期間が過ぎてしまう場合については、別途「在留期間更新許可申請」が必要です。
費用は、許可された場合に収入印紙代8,000円が必要です。
(2)出生等により永住者の在留資格の取得を希望する外国人の場合
永住権の取得については、出生その他の事由発生後30日以内に申請します。
この取得の場合、手数料はかかりません。
(3)申請先
申請は以下のいずれかで可能です。
申請人本人が居住する地域を管轄している、地方出入国在留管理局
外国人在留総合インフォメーションセンター
法務省は原則 申請~結果が出るまでに4ヶ月と公表していますが、永住申請する一人一人の条件
は違いますし、永住権の審査は厳しく、他の在留資格よりとても時間がかかります。
その理由は、結論からいうと大きく分けて2点あります。
先ず1点目は、
端的に言うと申請者は永住許可申請が仮に不許可になっても継続して日本に在留できるからです。
次に2点目は、
申請者が永住者になると、選挙権以外は日本国民とかなり近い権利が付与されるからです。
(4)本人以外が申請できる場合
本人以外でも、申請人本人の法定代理人と以下の者は、代理申請を行うことが可能です。
企業の場合は、申請取次の承認を受けた職員が「申請人が経営している機関又は雇用されている期間の職員」に当てはまり、本人の代わりに申請することが可能です。
(5)永住申請の必要書類
永住者の在留資格に変更する場合の、必要書類をリストアップしてご紹介します。
なお、変更前の在留資格によって必要な書類が異なるため、詳しくは法務省のホームページをご確認ください。
2:「永住者」「特別永住者」「帰化」「定住者」との違い
永住者と間違いやすい3つの資格について、その違いを紹介しましょう。
「帰化」と「永住者」の違い
「永住者(永住権)」と間違われやすいのが「帰化」です。
「帰化」は日本国籍を取得することをいいます。外国籍ではなくなり、簡単に言えば日本人になることなので、在留資格制度からは外れます。日本人が受ける社会保障などの権利も、全て同じように受けられることになります。
一方、「永住権」は在留資格「永住者」のことですから、あくまで「外国人」として日本に在留し続けるものです。帰化の申請・承認は永住権より更にハードルが高くなります。また、日本では二重国籍が認められていないので、日本国籍を取得したい場合には、元々の国籍を手放す必要があります。元の国籍に戻したいと思った時に、国籍を取り直すことが大変難しい国もありますので、帰化には十分な検討が必要です。
そして、できるだけ理解しやすいように一欄表にまとめたのでよく確認してみてください。
科目 | 帰化 | 永住 |
根拠法 | 国籍法 | 出入国管理及び難民認定法 |
申請先 | 法務局 | 出入国在留管理局 |
審査期間(申請〜許可) | (平均)8ヶ月〜2年 | (平均)4ヶ月〜8ヶ月 |
申請要件「最長の在留期間をもって在留しているもの」 | なし | 3年 入管法(施行規則別表第2) |
居住要件(原則)
帰化の場合は解説の図を参照 |
継続して5年居住が必要
(その中で、就労が3年) |
継続して10年居住が必要
(その中で、就労が5年) |
能力要件 | 18歳以上で本国法で行為能力を有すること ※但し、緩和規定あり |
なし |
素行要件 | ○善良であること
・年金の支払い ・交通違反 ・納税義務 |
○善良であること(こちらの方が帰化よりも厳しく審査される)
・年金の支払い ・交通違反 ・納税義務 |
生計要件 | ○独立して生計を営むことができること | ○独立して生計を営むことができること |
思想要件 | ○あり
・テロなどの破壊活動など 危険思想を持っていないか |
▲なし
国益適合要件として 審査される可能性あり |
日本語能力要件 | ○あり | ×なし |
国籍 | 日本国籍となり、
母国の国籍を喪失する |
本国の国籍のまま |
日本国パスポート | ○あり | ×なし |
戸籍 | ○届出により取得する | ×なし |
氏名変更 | 1)日本の氏名に変更 2)従前本国の氏名継続可能 ※但し、一部制約あり |
本国氏名のまま |
選挙権・被選挙権 | ○あり | ×なし |
在留期限 | ×なし | ×なし |
在留更新 | ×なし | ○あり(7年ごと) |
外国人登録 | ×なし | ○あり |
再入国手続き | ×なし | ○あり |
強制退去処分 | ×なし | ○あり |
職業の制限 | ×なし | ×なし |
年金加入義務 | ○あり | ○あり |
銀行の取引(ローンなど) | ○受けやすい | ○受けやすい |
「特別永住者」と「永住者」の違い
「特別永住者」とは、1991年11月1日に施行された「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法(入管特例法)」に定められた在留資格をもっている外国人のことです。
日本は第二次世界大戦に敗戦し、サンフランシスコ平和条約によって占領していた朝鮮半島や台湾などが領土ではなくなりました。これにより日本国籍を失った人々と、その子孫に対して永住を許可したものです。特別永住者の数は減少していますが、まだまだ雇用することもあるでしょう。
「永住者」と「特別永住者」の大きな違いは、在留カードです。
・永住者……在留カードの交付あり
・特別永住者……在留カードの交付なし。代わりに特別永住者証明書を交付
その他にも、特別永住者は「外国人雇用状況届出」の提出が不要だったり、申請場所は入管ではなく住民票のある自治体だったりの違いがあります。
もっとくわしく知りたい方は ➡特別永住者の解説 https://kikajapan.info/archives/naturalization-basics/1402/
「定住者」と「永住者」の違い
「永住者」と「定住者」は、日本に在留する外国人の身分のことですが、これらには以下の違いがあります。
在留期間の(違い)
・永住者:在留期間に制限なし
・定住者:在留期間に制限あり
更新手続きの有無(違い)
・永住者:更新手続き不要
・定住者:更新手続きが必要
違いをまとめると以下のとおりとなります。
*許可申請ではなく単なる期限の更新
告示定住者と告示外定住者の比較
科目 |
永住者 |
定住者 |
在留期間 |
無期限 |
6か月・1年・3年5年 |
在留期間の更新 |
原則不要* |
必要 |
就労活動の更新 |
なし |
なし |
再入国許可 |
必要 |
必要 |
退去強制 |
対象 |
対象 |
参政権 |
なし |
なし |
外国人登録 |
必要 |
必要 |
*許可申請ではなく単なる期限の更新
告示定住
以下に該当すると「在留資格認定証明書」により、「定住者」VISAで渡日することができます。
定住者告示3号
・日本人の孫(3世)
・日本人の子として生まれた後、日本の国籍でなくなった人(2世)
・日系1世が日本の国籍でなくなる前(子供が生まれたときは日本国籍)の子供の子供(孫=3世)
定住者告示4号
日系1世が日本国籍でなくなった後(子供が生まれたときは日本国籍でない)に生まれた子供の子供(孫=3世)
素行善良要件あり
定住者告示5号
•イ 日系2世である「日本人の配偶者等」=(日本人の子)の在留資格をもって在留する者の配偶者です。
たとえば2世の奥さんです。
日系2世である「日本人の配偶者等」=(日本人の子)の意味は、日系1世の「日本人の子として出生した者」が日本国籍を有する(または有していた)場合は、その2世である子供は「日本人の配偶者等」の在留資格になります。
また、その日系1世が日本国籍を有しない間に生まれた子は、前記定住者告示3号により、「定住者」となります。
•口 「日系2世、3世以外の定住者(非日系人)」の配偶者
•ハ 「日系2世、3世の定住者」の配偶者
・「口」と「ハ」はどちらも「定住者」となります。
・「ハ」については、素行善良要件あり
・「口」、「ハ」とも、日本にいる外国人定住者が、本国にいる妻(夫)を呼ぶ場合であり、日本にいる外国人定住者の在留期間は1年以上が必要です。
定住者告示6号
本国にいる自分の実子を「定住者」として呼ぶことができるということが書かれています。ただし、その子供は未成年、未婚であることが条件で、日本に呼んだあとに扶養することが必要です。
その子供は、実子でなければなりません。実子には、現在の配偶者との間の子、離婚し た配偶者との子、死別した配偶者の子、非嫡出子があたります。
次の人たちは、本国にいる自分の実子を「定住者」としてよぶことができます。
•永住者
•特別永住者
•定住者(在留期間1年以上) 日系人の子をよぶときは、その子供の素行善良要件あり
•上記の人の配偶者で「日本人の配偶者等」、「永住者の配偶者等」の子
定住者告示7号
本国にいる自分の養子(6才未満)をよぶことができることが書かれています。その養子の子供は、日本によんだあとに扶養することが必要です。
次の人たちは、本国にいる自分の養子(6才未満)を「定住者」として呼ぶことができます。ここで言う「養子」とは「普通養子」を想定しています。
• 日本人
• 永住者
• 定住者(在留期間1年以上)
• 特別永住者
養子には「普通養子」と「特別養子」という2つがあります。「特別養子」というのは、簡単にいうと「前の親との縁を断ち切り、後の親の実子になる」ようなものです。特別養子で、子供をよびよせる場合は、「定住者」ではなく、「日本人の配偶者等」ビザになります。
定住者告示8号
この8号は、中国残留邦人関係のことが書かれています。
昭和20年頃の戦争時の混乱のための救済措置になっています。
「定住者」とは、日系人(申請人からして祖父母などが元日本人)やその方と結婚(入籍)した、定住者の実子、日本人や永住者の配偶者の実子(いわゆる連れ子)、日本人や永住者・定住者の6歳未満の養子、中国残留孤児やその親族、難民認定を受けた外国人など、日本人や永住者と結婚(入籍)後3年以上経過した夫又は妻になります。
外国人採用企業担当者の「永住者」関連の注意点
企業の採用担当者からよく聞かれる、永住権に関する疑問をまとめてみました。採用を検討中でしたら、参考にしてみてください。
永住権を持つ外国人を採用する場合の注意点
就労制限等がない在留資格「永住者」ですが、「外国人雇用状況の届出」は他の外国人と同様に義務です。必ず提出しましょう。
また、犯罪といった永住に相応しくない行動をした場合は、永住権の在留資格を取り消されてしまう可能性があります。犯罪に巻き込まれないように注意するのは本人の責任でもありますが、企業としても注意喚起をした方が良いでしょう。
企業側が負担するべき費用の有無
「技術」「人文知識」「国際業務」のような就労系の在留資格であれば企業が相応の負担をしなければなりませんが、永住権の申請については個人的な問題であり、就労系の在留資格のように法人にかかる書類の提出はもとめられることがないため企業側が費用を負担しなければならないことは、特にありません。
永住権を持っている人を採用するメリット
永住権を持っている場合、「在留期間の制限がない」「日本での活動に制限がない(職種や業種などの就労制限が無い)」ので、在留期限や就労可能業務内容について気にする必要がありません。在留資格に合わない職種で働かせたり、在留期限が切れているのに働かせたりしてしまえば、不法就労助長罪で罰せられてしまいますので、担当者は把握をしておく必要があります。
ただし、永住者でも在留カードの更新はあるため、忘れないように注意が必要です。
永住権の確認をするには
永住権を持っている、と外国人本人が言う場合でも必ず在留カードを確認しましょう。在留資格が「永住者」となっていれば大丈夫です。
海外転勤と永住申請との相関関係
海外に長期で出張する場合、いったん日本の在留資格を返納する手続きを取るため、永住権申請に必要な在留年数がリセットされてしまいます。そのため、永住権を取りたい外国人社員に海外転勤を打診しても断られる可能性があるでしょう。将来、海外転勤を視野に入れて採用をするのであれば、注意が必要です。
あとがき
このコンテンツでは永住権の申請の方法や永住と類似した「帰化」「特別永住者」などを説明しました。
永住権を持っている外国人であれば、他の在留資格のように業務内容や在留期限に注意を払う必要はなくなります。ただし、素行不良などによって永住権が取り消される可能性はもちろんありますし、これから永住権を取得予定の法人の場合は、長期にわたる海外転勤と在留年数の兼ね合いにも注意が必要です。
とはいえ、永住権を持っているということは、企業に長期間勤めてもらえる可能性が高いということです。永住権を活用して優秀な人材を確保することが企業の戦力につながると思料されます。