「永住権」解説
このコンテンツでは永住権の基本知識や永住権の取得手順やその方法、そして永住権を基にした各在留資格との違いを解説します。
1:永住権の意義
Significance of permanent residence
先ずは、永住権とは何かについてお話していきましょう。
永住権とは、身分系在留資格である「永住者」に紐づく権利であり、在留期間に制限されることなく日本に滞在する事が出来る権利のことを指します。
この永住権は日本での活動制限も定められておらず、職業や業種を問わず就労する事が認められています。取得には特定の要件を満たす必要がありますが、これらについては後ほどお話します。
なお、永住等の在留資格については、「在留資格とは」種類や取得要件、ビザとの違いなどを簡単解説」も併せてご覧ください。
1-1永住権とは
永住権とは、外国人が在留期間を制限されることなく滞在国に永住できる権利のことです。
この権利は、「永住者」という在留資格にあたります。
*現在、2024年時点において帰化手続より許可率が低く厳しい審査がある。
1-2永住者権には就労制限がない
永住者の場合、就労資格(VISA:技術・人文知識。国際業務)などの制約される在留資格該当性(技術:プログラマー/SE・人文知識:ホワイトカラー、国際業務:翻訳通訳)の範囲しか就労できなかったところ、極端にいえば風営法に関連する職種での就労制限さえも制約がなくなります。
したがって、永住者は日本人と同様に何らの制約を受ける事なく就労ができます。さらに、在留期間が無期限であるため、雇用する会社側も長期間にわたって雇用できるため組織の重要な一員となります。
よって、収入面での増加も期待できるため在留無期限の状況も相まって金融機関での融資借入が円滑になり長期借り入れのため借入金利も日本人同様の低金利となります。
1-3在留資格「永住者」を取得している人はどのくらいいる
では、日本にはどれくらいの永住者がいるのかを、近年の推移とともに確認してみましょう。
法務省が公表しているデータを見ると、永住者は他の在留資格よりも多い人数かつ、増加傾向にあることがわかります。
2023年6月時点では880,178人で在留外国人全体の27.3%となっており、2番目に多い技能実習358,159人の約2.45倍者人数がいるのです。
参照元:出入国在留管理庁(2023)令和5年6月末現在における在留外国人について
後ほど紹介する特別永住者と併せれば、116万人を超える規模を誇っています。
また、2023年6月末時点での永住者を国籍別でみると多い順から中国・べトナム・韓国・フィリピン・ブラジル・ネパールその他となっております。
参照元:出入国在留管理庁(2023)令和5年6月末現在における在留外国人について
1-4 「永住権」取得のメリット
ここからは永住権を取得するメリットについてご紹介します。
永住権を取得するメリットは大きく3つあり、以下のとおりです。
在留期間の制限がなくなる
永住権による永住者の在留期限は「無期限」です。そのため他の在留資格と異なり在留資格自体の更新の必要がありません。(ただし、許可がともなう更新はない。)
しかし、永住者を含むすべての中長期在留者に発行される「在留カード」には有効期限があります。そのため、定期的に在留カードの更新の手続きが必要です。
更新は有効期間の2ヶ月前から可能です。
(ただし、在留カードの有効期間が「16歳の誕生日」になっている場合は、誕生日の6か月前から更新申請が可能です。)
就労の制限がなくなる
他の在留資格は資格の種類ごとに就労できる業務、内容に制限がありますが、永住権を持つ永住者の在留資格はこの制限がありません。
そのため、日本人と同じように就労したい職業をいつでも自由に選択することが可能です。
住宅ローンなどが組みやすくなる(社会的信用度がある)
永住権保有者は、在留期限がなくなるだけでなく、日本政府より「日本で半永久的に暮らしてもよい」と認められるほど「信用を得ている人物」とも考えられます。
言い換えると、日本で永住権を取得することは、日本人と同等の社会的信用を得た事になります。そのため、銀行などの金融機関において結果的に住宅ローンが組みやすくなり、ハイクラスのクレジットカードが作りやすくなるのです。
2:永住権取得の条件
Conditions for permanent residence acquisition
日本に在留し続けるにはメリットが大きい永住権ですが、取得する条件は難いしのか?
確認していきましょう。
2-1素行善良要件|法令違反の有無と内容
まず、条件のひとつ目「素行が善良か」ですが、簡単に言うと、「法律や法令違反をしていないか、そしてあなたは真面目な人ですか」ということです。
犯罪による懲役、禁錮又は罰金や、暴力団との関係性などだけでなく、納税義務などの公的義務を果たしているか、「そして、具体的に言えば公的義務にかかる支払も期限どうりに支払っているか」どうかも素行善良の要件とされています。
道路交通法違反などの軽微な違反などは1回~2回程度であれば素行不良とはみなされない(ただし、速度超過【スピード違反】や事故又は居眠り運転・飲酒運転などは重罪つまり罰金になった場合には刑事罰になりますから相当期間を経ないと申請しても不許可になるケースがあります。)ケースが多いようですが、何度も繰り返し行うと素行不良となる可能性もあります。
2-2独立生計要件|生活していくための資産
次の条件としては、「独立生計要件」です。出入国在留管理庁の永住許可に関するガイドラインでは、以下のように記載されております。
(2)独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること
日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。言い換えると、将来にわたって日本で生活をしていく上で自活していくだけの収入や資産、スキルがあるかどうかです。あくまでも目安ですが、世帯年収が3年間にわたって300万円以下だったり、生活保護を受給している等はこの要件を満たさないと判断されてしまうでしょう。
2-3国益適合要件|日本にとって利益がある人物か
最後は「国益適合要件」です。その外国人の永住取得することが日本にとって利益になるかどうかです。
こちらも出入国在留管理庁の永住許可に関するガイドラインでは以下の様に記載されています
(3)その者の永住が日本国の利益に合すると認められる事
ア)原則として引き続き10年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能1号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き5年以上在留していることを要する。
イ)罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的義務(納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務)を適正に履行していること。
ウ)現に有している在留資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第2に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。
エ)公衆衛生上の観点から有害となるおそれがないこと。
出典:法務省|永住許可に関するガイドライン
原則10年在留に関する特例(令和元年5月31日改定)
【要件解説】
ア:来日から現在まで10年間以上連続で日本に居住しており、そのうち5年間は「就労資格(技能実習、特定技能1号を除く)」または「居住資格」で在留していることが必要です。例えば、留学で来日し日本の大学で4年間、その後は技術・人文知識・国際業務で日本企業にて6年間就労している様なケースです。
イ:前述の素行善良要件と一部重複していますが、犯罪による懲役、禁錮又は罰金や暴力団との関係性などだけでなく、納税義務などの公的義務を果たしているかなども素行善良の要件を満たしているかが判断されます。年金や健康保険などの滞納がないかも調べられることがあります。
ウ:現在有している在留資格の最長の在留期間をもって在留している必要があるということです。今では多くの在留資格で在留期間の最長期間が5年となっていますが、審査上、当面の間は、在留期間が3年の在留期間として取り扱うこととなっております。
エ:永住権を希望する外国人本人が、何らかの感染症にかかっていないかなど、公衆衛生上で問題がない必要があります。
2-4永住権を取得するための特例
前述では永住権の取得要件として3つの要件を紹介しましたが、これにはいくつかの特例が存在します。
①日本人または在留資格「永住者」「特別永住者」の配偶者か子供の場合
この場合は、
・素行善良要件
・独立生計要件
の2つが免除されることになっています。
②原則10年在留に関する特例
これは10年間の在留がなくても永住権の申請が出来る特例です。
こちらも出入国在留管理庁の永住許可に関するガイドラインの記載の一部抜粋して簡単に解説します。
日本人、永住者及び特別永住者の配偶者の場合、実体を伴った婚姻生活が3年以上継続し、かつ、引き続き1年以上本邦に在留していること。その実子等の場合は1年以上本邦に継続して在留していること
日本人または永住者の配偶者である場合で、婚姻期間中に別居などがなく実体を伴った婚姻生活が3年以上継続していれば、1年日本に在留していれば永住申請が可能です。日本人または永住者の子供の場合は、1年以上日本に在留していれば永住申請が可能になります。
(2)「定住者」の在留資格で5年以上本邦に在留していること
「定住者」の在留資格の外国人は、永住者の在留資格で5年以上途切れることなく日本に住んでいれば永住申請が可能です。
難民の認定を受けた者は、認定後5年以上継続して本邦に在留していること
難民申請をしている外国人が難民認定法を受けた場合、認定の日から5年以上日本に在留していれば永住申請が可能になります。難民申請の審査期間は長いですが、審査期間中の在留については5年にカウントされません。
外交、社会、経済、文化等の分野において我が国への貢献が認められる者で、5年以上本邦に在留していること
「外交・社会・経済・文化等の分野において我が国への貢献が認められる者」に該当する場合には、10年以上でなく5年以上日本に在留していれば良いという特例です。また、期間が5年以上に短縮されているだけでなく、「継続して」の在留でなくともよいことがポイントとなります。
出入国管理及び難民認定法別表第1の2の表の高度専門職の項の下欄の基準を定める省令(以下「高度専門職省令」という)に規定するポイント計算を行った場合に70点以上を有している者で合って、次に該当する者
ア)「高度人材外国人」として3年以上継続して本邦に在留していること
イ)3年以上継続して本邦に在留している者で永住許可申請日から3年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に70点以上の点数を有していたことが認められること。
高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上を有している者であって、次のいずれかに該当するもの
ア)「高度人材外国人」として1年以上継続して本邦に在留していること
イ)1年以上継続して本邦に在留している者で、永住許可申請日から1年前の時点を基準として高度専門職省令に規定するポイント計算を行った場合に80点以上の点数を有していた事が認められること。
「高度専門職」の在留資格を保有している場合は、在留資格を取得した時から3年以上日本に在留していれば永住申請が可能という特例です。
また、他の在留資格で在留している場合でも、永住許可申請日から3年前の時点を基準として、高度専門職ポイント計算表で計算を行った場合に、70点以上の点数を有していたことが認められれば、永住申請が可能になります。
さらに、80点以上の高度人材在留資格を保有している場合は、1年以上日本に在留していれば永住申請が可能で、上記同様に他の在留資格以外で在留している場合でも永住許可申請日から1年前の時点を基準として、高度専門職ポイント計算表で計算を行った場合に80点以上の点数を有していたことが認められれば、永住申請が可能になるのです。
3:永住者と「特別永住者」「帰化」「定住者」の違い
Differences between permanent residents and “special permanent residents”, “naturalized”, and “settlers”
ここからは、先程から出てきている「特別永住者」や「定住者」、「帰化」と永住者の違いについてみていきます。
3-1永住者と「特別永住者」との違い
まずは、永住者と特別永住者の違いについてです。この違いについては、「特別永住者」とは何か。をみていくとわかりやすいです。どちらの在留資格も、日本において、永住を許可された資格であるという点では同一ですが、
・「永住者」は「出入国管理及び難民認定法」に基づく在留資格
・「特別永住者」は「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国管理に関する特例法を根拠にした在留資格」
上記の日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等とは、第二次世界大以前から日本に居住して日本国民として暮らしていた外国人で、サンフランシスコ平和条約により日本国籍を失った方々の事です。
主に韓国・朝鮮、台湾出身の方が占めており、戦後も母国に帰らず日本で生活している人が多くいたため、その方々やその子孫が日本へ定住することなどを考慮した上で、永住する権利を与えたのが特別永住者です。そのため、永住者との審査基準や法律上での義務も異なります。
彼らを雇用する上での大きな違いは2つあり、「在留カードの有無」と「外国人雇用状況届出の要否」です。
・永住者:在留カードの交付があり、かつ、カード携帯の義務あり。就労時は外国人雇用状況届出が必要。
・特別永住者:在留カードの交付はなく、代わりに特別永住者証明書が交付されますが、これらの証明書の携帯義務はなし。就労時は外国人雇用状況届出も不要。
なお、外国人雇用状況届出に関しては「【外国人雇用状況届出とは】手続き概要や様式、提出方法などを解説」も併せてご覧ください。
3-2永住者と「帰化」との違い
次に、良く間違われやすい「帰化」との違いです。
簡単に説明すると
「帰化」は外国人(外国籍の方)が日本国籍を取得し日本人になることで、対して、「永住者」は外国籍のまま日本で永久的に住む事ができる権利(永住権)がある在留資格とその資格を持っている方の事です。
「帰化」は外国籍ではなくなり日本国民になるので、在留資格制度からは外れ、日本人が受ける社会保障などの様々な権利も、全て同じように受けられることになります。
永住者の在留資格を取得するよりも、帰化の申請・承認のハードルは更に高くなります。
日本では二重国籍が認められていないため、帰化をし日本国籍を取得したい場合は元々の国籍を喪失する必要があります。もし、元の国籍に戻したいと思った時に、国籍を取り直すことが困難な国もあるので、帰化には十分な検討が必要です。
3-3永住者と「定住者」との違い
また「定住者」もよく混同されますので、その違いを説明します。
「定住者」とは、法務大臣が特別な理由を考慮した上で、一定の在留期間を指して居住を認める者、及びその在留資格の事を指します。
そして、「定住者」資格には【告示】定住者と【告示外】定住者の2種類が存在します。
具体的事例としては、
【告示定住者】
・日系人
・定住者の実子
・日本人や永住者・定住者の6歳未満の養子
【告示外定住者】
・日本人や永住者と結婚後、3年以上経過してから離婚した人
・婚姻関係にある日本人と死別した夫又は妻
・日本人との婚外子を出産した実母
・日本の義務教育を受けた家族滞在者が高校・大学を経て就職する場合
等が挙げられます。
永住者と異なり、在留期間に定めがある上、在留資格の変更手続きが必要となります。
4:永住権許可の取得方法
How to acquire permanent residence permit
ここからは永住権の申請から許可をもらうためにはどうすればよいかを見ていきます。
4-1永住者申請に必要な書類は
まず、永住権を取得するには「永住許可申請」を行う必要があります。
この申請手続きは原則本人が行うものとされており、以下のとおりです。
手続き対象者
永住者の在留資格に変更を希望する外国人
出生等により永住者の在留資格の取得を希望する外国人
申請期間
変更を希望する場合、在留期間の満了する日まで。ただし、永住許可申請中に在留期間が経過する場合には、在留期間の満了する日までに別途在留期間更新許可申請をする事が必要
取得を希望する場合は、出生やその他事由発生後30日以内。
申請先
住所地を管轄している地方出入国在留管理局、または、外国人在留総合インフォメーションセンター
必要書類
必要書類は、申請人の在留資格や身分・地位によって異なりますが、在留資格変更の場合の必要書類は以下の通りです。
・申請書
・写真1葉(縦4㎝×横3㎝。写真の裏面に氏名を記入し、申請証に添付して提出)
・16歳未満の方は写真の提出は不要です。
・立証資料(元の在留資格によって異なります。詳細は法務省のホームページをご覧ください。)
https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/zairyu_eijyu01.html
・在留カード(在留カードとみなされる外国人登録証明書を含みます。以下同じ。)を提示
・資格外活動許可書を提示(同許可書の交付を受けている者に限ります。)
・旅券又は在留資格証明書を提示
・旅券又は在留資格証明書を提示することができないときは、その理由を記載した理由書
・身分を証する文書等の提示(申請取次者が申請を提出する場合)
前述の通り、ケースによっては書類が異なります。詳細は以下からご確認下さい。
➀ 申請人の方が、日本人の配偶者、永住者の配偶者、特別永住者の配偶者又はその実子等である場合
➁ 申請人の方が、「定住者」の在留資格である場合
➂ 申請人の方が、就労関係の在留資格(「技術・人文知識・国際業務」、「技能」など)及び「家族滞在」の在留資格である場合
➃ 申請人の方が、「高度人材外国人」であるとして永住許可申請を行う場合
4-2永住申請の審査期間
永住許可申請は、他の申請よりも審査期間が長く、短くても4ヶ月、長ければ1年~2年程度かかるケースもあります。また、ここまで解説してきた各種要件を基とするものの、最終的に法務大臣の裁量で判断されるため、仮に全ての要件に該当していても不許可となる可能性があることは留意しておくべきでしょう。
4-3本人以外でも永住申請はできるか
前述のとおり、申請手続きは原則本人とされておりますが、本人以外でも申請人本人の法定代理人と、以下に記載の取次者は代理で申請を行う事が可能です。
(出典:出入国在留管理庁|永住許可申請)
取次者
地方出入国在留管理局長から申請等取次者としての承認を受けている次の者で、申請人から依頼を受けたもの
・申請人が経営している機関又は雇用されている機関の職員
・申請人は研修又は教育を受けている機関の職員
・外国人が行う技能、技術又は知識を修得する活動の管理を行う団体
・外国人の円滑な受け入れを図る事を目的とする公益法人の職員
地方出入国在留管理局長に届け出た弁護士又は行政書士で、申請人から依頼をうけたもの
申請人本人が16歳未満の場合又は疾病(注1)その他の事由により自ら出頭する事が出来ない場合(注2)には、その親族又は同居者若しくはこれに準ずる者(注3)(注4)で地方出入国在留管理局長が適当と認めるもの(注1)「疾病」の場合、疎明資料として診断書等を持参願います。(注2)理由書(任意様式)等を持参願います。(注3)申請人との関係を証明する資料(住民票等)を持参願います。(注4)例として、以下の場合がみとめられます。
4-4永住申請が不許可になる場合
永住権が不許可になる可能性があるケースをいくつかご紹介しておきますので、参考にしてみてください。
・世帯収入が低い
・年金や社会保険料の未納や滞納履歴がある
・交通ルールの違反がおおい
・海外への出張や駐在期間が長い
・扶養人数が多い
基本的には先に挙げた3つの要件に関連した不許可ケースが多いので、注意しておきましょう。
4-5永住者は在留資格を更新する義務があるか
ほとんどの在留資格は期限があるため、付与された在留期間を超えて引き続き在留するには「在留期間更新許可申請」が必要です。一方で、先にお伝えしたとおり、永住者は在留期間に制限がないため在留資格の更新は必要ありません。
しかし、永住者を含むすべての中長期在留者には「在留カード」が発行され、この在留カードには有効期間があります。そのため、定期的に在留カードの更新の手続きが必要で、有効期間満了日の2か月前から更新手続きが可能です。
在留カードの更新を行わず有効期限が切れても、在留資格自体がなくなるわけではありません。ただ、在留カードを身分証として使用することは出来なくなってしまいますし、有効な在留カードを常時携帯しておくという義務に違反します。その際は、企業への罰則もあるため、永住者であっても企業側は在留カードの有効期限を把握しておくことをおすすめします。
5:永住者の在留資格者を雇用する場合の注意点
Precautions when hiring permanent residents
最後に、永住者を採用する際はどのような事に気をつける必要があるか解説していきます。
5-1外国人雇用状況の届け出義務の徹底
「外国人雇用状況の届出」は、事業主が外国人労働者を新たに雇い入れ及び離職する際に提出が義務付けられています。正社員かアルバイトかなど雇用形態に関係なく必要な届出で、届出を怠ったり、虚偽の届出を行った場合には、30万円以下の罰金の対象となります。
これは就労制限や在留期間制限がない永住者を有する外国人であっても必要な手続きです。一方で、「特別永住者」の在留資格の外国人であればこの手続きは不要になります。
5-2海外転勤命令<一時帰国の注意点
もし、永住者を有する外国人が海外へ長期出張や転勤、一時帰国などで1年以上日本を離れる場合には注意が必要です。その理由としては、以下の2つがあります。
①出国時に再入国許可が必要
再入国許可とは、日本に在留している外国人が一時的に出国した後に再入国をする場合、入国手続きを簡素化するために先立って与える許可の事です。
もし、この再入国許可を受けずに出国をした場合は、その外国人が有していた在留資格と在留期間が消失してしまうため、海外への長期主張や転勤、一時帰国の場合にはこの再入国許可を出国当日までに受ける必要があります。
再入国許可には、1回限り有効のものと有効期間内であれば何回も使用できる数次有効のものの2種類があり、その有効期間は、その外国人が有している在留期間の範囲内で最長5年間(特別永住者の方は6年間)で、その期間は海外に滞在することができます。
再入国許可については「外国人の一時帰国に手続きは必要?(再入国許可・みなし再入国許可)」で詳細をご確認下さい。
②海外滞在中に再入国許可(在留期間)が切れてしまうと永住者の地位が喪失
もし、海外滞在中に再入国許可の期限(在留期間)を超過してしまった場合、日本における永住者としての地位は喪失してしまいます。これは救済措置などもないため、改めて永住権の申請が必要になるのです。
再入国許可の期限については、有効期限内に再入国できないことに相当な理由がある場合には、1回に限り延長できる場合があります。その際は、有効期間は1年を超えず、かつ、当該許可の効力発生の日から6年(特別永住者の場合は7年)を超えない範囲内での許可をされており、日本を出国する前から与えられていた在留期限を超えて有効期間を延長する事は出来ません。
また、永住権を申請する予定の外国人が日本から出国する場合、永住権申請に必要な在留年数がリセットされてしまいます。そのため、永住権を取りたい外国人を社員として雇用している場合は、海外転勤を打診しても断られることもあるでしょう。もし採用後に長期の海外出張や転勤の可能性がある場合には注意が必要です。
5-3永住者は採用難易度が高い
就労内容や在留期間に制限がない「永住者」の外国人の採用を希望する企業は多いでしょう。しかし、彼らも就労制限がないため、いわゆるホワイトカラーの仕事を望む傾向が強いです。そのため、単純作業や現場業務などのブルーカラー職種での採用は、待遇面での相当なメリットがないと難しいと言えるでしょう。
単純作業や現場業務などで外国人労働者の雇用を考えている方は、「特定技能」の在留資格の外国人雇用を検討されるのをおすすめします。
あとがき
このコンテンツでは永住者の基本的な内容を解説しました。
永住権を持つ外国人労働者は、企業にとっても非常に魅力的な人材であることは間違いありません。